監 禁 罪 の 保 護 法 益

 

 

場所的移動の可能的自由

場所的移動の現実的自由

理由

その場に留まるのも他の場所に移動するのもその人の自由であり、そうしたいわば行為の選択肢を有すること自体に特別の意義がある。

意思活動能力を事実上のものととらえ、自然的・事実的意味で客体の任意の行動を基準に考えるべきである。

被害者に意思能力がなくても(幼児)本罪は成立するが、意思活動の能力すらない場合(嬰児)は成立しない。

被害者が監禁されていることを認識している必要はない。

現実に移動しようとしても阻止されてできない場合を捕捉することを出発点とする。

行動の自由は行動の意思を必要とするとして精神的側面を重視すべきであるし、同時に行動の自由は行動を自らなしうる者についてのみ可能と解される。

被害者に意思能力、意思活動の能力がない場合には、本罪は成立しない。

被害者が監禁されていることを認識している必要がある。

批判

監禁罪は危険犯ではないところ、この説では自由の侵害の危険を処罰することになり不当である。

監禁された者が夜になって眠りにつくと監禁罪の成立が中断することになり、不都合である。

事例

@甲は、Xが寝ている部屋の外から鍵をかけたが、2時間後、Xが目を覚ます前に鍵をあけた。

A甲は、重度の精神病患者であるXが寝ている寝室の外側から鍵をかけたが、2時間後、Xが目を覚ます前に鍵をあけた。

B甲は夜、住宅街を車で走っていたところ、女友達のYが泥酔して道端にうずくまっているのを発見し、強姦してやろうと思い、家まで送ってやると騙してYを車に同乗させた。しかし、Yは泥酔していたため、車から降りるまで事態に気づかなかった。

C甲はXが乗っているエレベーターのスイッチを切り、「ただ今停電中です」と欺いてXを閉じ込めた。

帰結

@監禁罪が成立する。

A成立しない。

B成立する。

C成立する。

@成立しない。(移動しようと思わないから)

A成立しない。

B成立しない。(監禁の認識がないから)

C成立する。(監禁の認識はある)