SS第三話 「花火大会!?」 隣に座っていた霊夢が素っ頓狂な声をあげた。 「ええ。」 と、首肯したのは紅魔館のメイドである十六夜咲夜。 自称『十代後半』らしい………。 どう見ても、二十歳は超えてそうなのだが……、 と思っていると、ぱっとこちらに顔を向け、 「何か?」 と、微笑みながら問うてくる。顔は笑ってるのに、目が笑ってない……。 「い、いや……。なんでもない………。」 数秒こちらをジーっと見た後、霊夢に視線を戻し、 「花火大会をやりたいと思うので、その準備をやってくれないかしら?」 さっきと同じことをまた言った。 「はい?花火大会って何?なんで、それをやるわけ?」 私はこの話は前から知ってたので、驚かないが、霊夢が驚くのは当然のことだろう。 なにしろ、さっき花火大会という言葉を初めて聞いたのだろうから。 「花火大会の花火とは、外界の人間たちが火薬を筒にいれ、空中に打ち出して、  様々な美しい色形に破裂させるものらしいわよ。あたかもそれは空に咲いた花のようだとか。  それを眺めるのが花火大会らしいわよ。」 「そうね。花火大会については、わかったわ。だけど、何でやろうと思ったの?  どうせ、また、吸血鬼の思い付きだろうけど。」 「確かに、お嬢様の思い付きだけれども、あなた達にとっても損はないはずよ。  夏に、花見みたいなことができるわけだし。この行事は、夜にやるらしいから、  お嬢様もらくだし。まさに、利在って、害なしだわ。だから、あなたにやってもらいたいのは、  いつも通りに宴会の準備をやってくれればいいの。」 「ん〜……。」 霊夢が悩んでいる。 だから、私は最後のひと押しをする。 「やればいいじゃないか。やることはいつもと変わらないんだし。  それに楽しそうじゃないか。」 「そう考えれば、そうだけど………。そうね。考えてもしょうがないわ。ダメ元だけど、  やってあげる。花火大会とやらができなくても、普通の宴会ができるわけだし。」 霊夢が確固とした面持ちで言いきった。 「さすが。霊夢だぜ。」 と、私が言い、 「そう。良かったわ。あなたがやってくれて。」 と言い残すと、そそくさと帰って行った。相変わらず、仕事一筋のようだ。 「いよいよ。面白くなってきたな。」 まずはあれを準備して、次にこれをと、呟きながら考え始めた霊夢を 視界にとらえながら、私は一人つぶやいた。